リストを「管理」するということ
ウォッチリストを初めて作るときは、どんな基準で入れたり外したりするかを考えます。その基準は「ウォッチリストの作り方」の記事で、取引が十分か、どこに上場しているか、情報を確かめられるかとして整理しました。この記事はその次、作ったリストを毎日どう回すかを扱います。リストは作った瞬間から古くなり始めます。取引が細るコインが出てきて、なぜ入れたのか忘れたコインが残り、大きく動いたコインを一つ二つと足していくうちに、いつの間にか何十個にもなります。そうなるとリストはふるいではなく、もうひとつの全銘柄の相場画面になります。管理するとは、リストの大きさを守り、コインごとになぜ見ているのかという役割を決め、定期的にふるい直し、見続けなくてもすむよう通知を設けることです。この四つがそろうと、リストを見る時間は減っても、見るたびに何を確かめるべきかがはっきりします。
いくつが適当か
正解となる数はありませんが、基準ははっきりしています。毎日1回ずつコインごとにチャートを開き、状態を1行で言える数が上限です。それを超えると大半のコインは価格だけを眺めて通り過ぎることになり、リストに入れておく意味がなくなります。市場全体と比べるための基準銘柄を一つか二つは常に入れておき、残りの枠は実際に研究しているコインに使います。数を決めるときは使う画面も考えます。スマートフォンの1画面に収まるカードの数とサブモニターに表示できる数は違い、1画面に収まらなければ下のほうのコインは自然と見る回数が減ります。上限を決めたら、新しいコインを入れるときにひとつ外すルールも一緒に設けます。入れるだけで外さないリストは必ず長くなります。外すコインを選びにくいなら、この1週間でそのコインのチャートを一度でもきちんと開いたかを基準にすればよいでしょう。
役割ごとのグループに分ける
リストの中のコインをすべて同じ重みで見ると、どのコインはいま条件を待っていて、どのコインはただ眺めているだけなのかが区別できません。役割によってグループを分けると、見るたびに確かめることが変わります。グループ機能のないツールなら、並び順で分けるだけで十分です。基準銘柄をいちばん前に、条件待ちのコインをその次に置くといった具合です。コインを別のグループへ移すときは、その理由を1行残しておきます。「条件待ち」から「整理候補」へ下げた理由がたまると、自分がどんなコインに関心を持ち、なぜ手放すのかという癖も見え始めます。次はよく使われるグループの例です。
- 基準:ビットコイン・イーサリアムのように市場全体の方向を見るコイン
- 条件待ち:あらかじめ書いておいた条件が合うのを待つコイン(通知を設定する)
- 様子見:まだ条件はなく、動き方の性格をつかんでいるコイン
- 整理候補:取引が細ったか入れた理由がなくなり、次の点検で外すか決めるコイン
流動性のふるいは定期的に
リストに入れたときには取引が十分だったコインも、数週間後には事情が変わることがあります。関心が冷めると売買代金が減り、板が薄くなり、小さな注文でも価格が跳ねる足が増えます。そのため、取引が十分かどうかは入れるときの一度だけでなく、決まった周期で確かめ直します。数字の基準をひとつ決めておくと判断が楽になります。たとえば24時間の売買代金が自分で決めた水準を下回る日が数日続いたら「整理候補」に移す、といったやり方です。その水準は各自が取引しようとする規模に合わせて決めるもので、正解のある値ではありません。売買代金だけを見ると一時的なニュースで取引が集まった日にだまされやすいので、次の項目を一緒に見ます。
- 24時間の売買代金が数日続けて安定しているか、1日だけ跳ねたのか
- 最良の買い気配と売り気配の間隔が広がっていないか
- 取引の少ない時間帯に約定のない空の足が増えていないか
- 取引所のお知らせに注意銘柄の指定や入出金の停止がないか
見張る代わりに通知を設ける
リストを表示したまま見続けても、見た分だけ判断が良くなるわけではなく、小さな動きにも反応するようになります。1分ごとに変わる数字は、それだけで何かしなければならないような圧力を与えます。そこで「条件待ち」グループのコインには通知を設定し、通知が鳴ったときだけチャートを開きます。通知の判定基準(形成中の足か確定した足か)、境目で点滅する問題、通知疲れは「価格・指標アラートの設計法」の記事で詳しく扱ったので、ここではリスト管理につながる順序だけを整理します。通知を初めて設定するときは見逃したくなくて条件を緩くしがちですが、そうすると通知が鳴りすぎて結局無視するようになります。最初は少なく設定し、1週間後に増やすほうがよいでしょう。
- 「条件待ち」のコインごとに、確かめたい条件を1行で書く
- その条件を、価格・急変・指標のうち通知で設定できる形に置き換える
- 通知が鳴ったら何を確かめるかを、あらかじめ書いておく
- 寝ている時間のように対応しない時間に鳴る通知は減らすか切る
- 1週間に鳴った通知のうち、実際に確かめる価値があったものだけを残す
画面の配置:ボードとチャートを分けて使う
リストを見る画面とチャートを読む画面は役割が違います。リストの画面は多くのコインのいまの状態を一目で見渡すためのものなので、価格、24時間の変動、ミニチャートのような要約された情報で十分です。一方、判断はチャートの画面で足の長さと指標をそろえてから行うべきです。両者を混ぜてリスト画面の数字だけで判断すると、24時間の変動のように転がっていく基準の数字に振り回されやすくなります。サブモニターがあるならリストのボードを表示しておき、メインの画面ではチャートを見るように分け、1画面だけなら、リストは決まったときにだけ開きます。複数のコインの形を同じ時刻どうしで比べたいときは、マルチチャートで同じ足の長さの欄を並べて表示します。基準銘柄を常にひとつの欄に置いておくと、ほかのコインの動きが市場全体の動きなのか、そのコインだけのことなのかを区別しやすくなります。
リストを管理するときによくある失敗
リスト管理の失敗の多くは、リストが静かに長くなったり、入れた理由がぼやけたりすることから生まれます。一度に起こるのではなく少しずつ積み重なるので、気づきにくいものです。次の項目のうち、いまの自分のリストに当てはまるものがないか、ときどき確かめます。特にリストが長くなるのは、たいてい相場が騒がしい時期です。大きく動くコインが多いほど入れたいコインも増えるので、そういう時期ほど上限と「ひとつ入れたらひとつ外す」というルールをより厳しく守ります。
- 大きく上がったり下がったりした直後のコインを足し続け、リストが過去の急騰の記録になる
- 入れるだけで外さず、見渡しきれないほど長くなる
- コインごとになぜ見ているのかを書いておかず、理由を忘れる
- 通知なしで画面を見張り続け、小さな動きに反応する
- リスト画面の「過熱」「低迷」のような表示を行動のシグナルとみなす
- 取引が細ったコインを、見慣れているという理由で残し続ける
このサイトのツールでリストを運用する
このサイトのマイ暗号資産ボードは、選んだコインを最大30個まで入れ、バイナンスのリアルタイム価格をカードで表示します。カードごとに現在価格、24時間の変動、24時間の高値と安値の間でいまの価格がどこにあるかを示すバー、24時間の売買代金、直近24時間のミニチャート、選んだ足の長さ(15分・1時間・4時間・日足)のRSI(14)バッジが出ます。グループ機能は別にないので、カードをドラッグして並べ替え、基準銘柄と条件待ちのコインを前のほうに集め、点検するときは並び順を売買代金順に切り替えて取引の細ったコインを探します。「TVモード」は画面全体を大きな文字の格子で埋めるのでサブモニターに表示しておくのに向いており、リストはこの端末に保存され、書き出し・読み込みで移せます。条件待ちのコインの通知は、暗号資産リアルタイム通知ボードで設定します。最大20銘柄に通知価格(足の終値またはリアルタイムの接触)、数分のうちの急変、RSIの70・30への進入のルールを設定し、音・タブの表示・ブラウザ通知で受け取れますが、ページを開いているときだけ動くことを覚えておきます。複数のコインのチャートを同じ足の長さで比べるときは、暗号資産マルチチャートを使います。ボードのカードの下のリンクから、そのコインを Pro チャート・マルチチャート・通知ボードで直接開けます。
週に1回のリスト点検チェックリスト
リストの点検は決まった曜日に1回、同じ順序で行います。相場が大きく動いた日にすぐリストを直すと、その日の雰囲気がそのままリストに残りやすくなります。次の項目を順に確かめ、変えた内容は日付とともに短く書いておきます。点検の記録が数週間たまると、リストがどう変わってきたか、どんな時期にコインを多く出し入れしたかを振り返れます。
- リストが決めた上限の中にあるか確かめた
- コインごとに、なぜ見ているのか、どのグループかを1行で言える
- 売買代金と気配の間隔から整理候補を選んだ
- 取引所のお知らせで注意銘柄・入出金の停止を確かめた
- 条件待ちのコインの通知条件がいまも有効かを見た
- この1週間に鳴った通知のうち、役に立たなかったものを整理した
- 新しく入れた数だけ外した
限界と注意事項
ウォッチリストは見るものを減らしてくれる仕組みにすぎず、リストにあるコインが上がるとか安全だという意味ではありません。売買代金やRSIのような数字はいまの状態を要約するだけで今後の動きを語らず、通知は条件を代わりに見張るだけで、その条件が良いかどうかは教えてくれません。相場は取引所の公開 API から来るので、遅れたり途切れたりすることがあり、ページを閉じている間は通知も鳴りません。取引所のお知らせや注意銘柄の指定といった情報はツールが代わりに確かめてはくれないので、自分で見る必要があります。この記事はリストを運用する方法を説明したもので投資助言ではなく、どのコインを買えとも売れとも言うものではありません。実際の売買の判断は、各自の状況に合わせて自分で下してください。
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